葉田甲太 ブログ。

医師 NPOあおぞら代表 5万人の命を守るタンザニア病院建設まで。

具体的な国際協力のキャリアのすすめかたと学生時代にやるべき事(医師編)

 

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「国際協力に興味あるんですけど、何から始めたらいいか分かりません。」

 

と言われる事がある。

 

思えば大学生1年生の時、僕もそうだった。

 

アフガニスタンで活動されていた中村哲先生以外ほとんど、知らなかった。

 

 

医大生で国際協力に興味がある人は多い。1学年(100人)に2~3人はいるんじゃないかと思う。

 

 

でも、実際に卒業してから続けている先生はおそらく、数千人に1人ぐらいだと思う。(完全に肌感覚)

 

 

 

新著でも書いたけれど、僕は4年前人生に迷いすぎて、長崎大学大学院熱帯医学講座を受講した時に、医療系の国際協力をされている先生方のキャリアを100人程度調べ上げた。

 

 

そこには、パターンと法則性があったので、ご紹介したい。何も分かっていなかった大学1年生の僕みたいな人に読んで欲しい。

 

 

ちなみに長崎大学大学院熱帯医学講座はめちゃくちゃお勧めです。教室に座っているだけで、有名な先生が何人も来てくれるし、その先生と直接話す事ができる。勉強した内容より、その経験や同期と切磋琢磨した事が何より貴重だった。

 

 

そして以下は完全に私見です。エビデンスも何もありません。

 

1、行政機関でキャリアを積むパターン

 

例えば例として、

 

 

医学部卒業→初期研修医→(後期研修医)→(専門医取得)→公衆衛生学(MPH)修士をとる、ロンドン、ジョンホプキンス、ハーバードが多い。→JPOを利用して国連で2年間働く→国立国際医療センター国際医療局で働く→etc

 

 

が王道パターンだ。

 

 

まず初期研修医はほぼ全員修了されている。後期研修は修了して専門医を取得している先生も多いけれど、中にはされていない先生もいる。

行政機関で働く場合は、公衆衛生の修士か博士を取得されてから働くが、その後の就職の事もあってか、ロンドン、ジョンホプキンス、ハーバードの大学院が多い。

 

日本の税金をつかわせてもらって、国連で2年間働けるJPOという仕組みがある。

35歳以下、修士、英語が話せれば応募できる。国連に直接応募するよりは、受かりやすい。

www.mofa-irc.go.jp

国立国際医療センター国際医療局で一度働かれた経験のある先生が多い。

 

 

つまり、

 

医学部卒業→初期研修医→(後期研修医)→(専門医取得)→公衆衛生学(MPH)修士をとる、ロンドン、ジョンホプキンス、ハーバードが多い。→JPOを利用して国連で2年間働く→国立国際医療センター国際医療局で働く

 

ここまでは大体40歳ぐらいまで同じだ。そこから、それぞれの先生の生き方になってくる。

 

 

著明な先生方

 

尾身茂先生

https://www.jichi.ac.jp/exam/medicine/message/omi.html

喜多悦子先生

会長プロフィール | 会長ブログ | 公益財団法人笹川保健財団Webサイト

國井修先生

www.osamukunii.com

business.nikkei.com

 

このパターンのメリット

 

①普通に暮らす事ができるお金はもらえる

②一部危険な仕事はあるが、基本的に安全

③国のガイドライン策定に関わったり大きな仕事ができる

 

 

このパターンのデメリット

①ほぼ臨床医としての仕事はなくなる

②政治的なゴタゴタにも巻き込まれる。

③キャリア争いに勝ち残っていく強さが必要。

 

※外務省から出向するパターンもありますが、一部なので省きました。すみません。

 

2、医者として紛争地等で活動する。

 

 

世間的には中村哲先生等が有名だから、国際協力ではこっちの方が馴染みが深いかもしれない。

 

医学部卒業→初期研修医→後期研修医→専門医取得→公衆衛生学(MPH)修士、熱帯医学修士をとる(ロンドン、タイのマヒドン等。)→国境なき医師団(MSF)等で働く→(NPOをつくる。)

 

 

大体、行政で働くパターンと変わらないのだけれど、修士号が現場で役立つ、臨床よりの熱帯医学を学べる大学院が多い。基本的に、マリア、デング熱等、熱帯医学を学ぶ機会は学生時代にほとんどない。その知識を学んで国際的な医療活動を行っている先生が多い。

 

 

国境なき医師団等では、もちろん現場で働ける事も大事だけれど、リーダーとしてチームをまとめる、教育を行う事も重要になるので、ある程度高い臨床能力を要求される。

 

 

このパターンのメリット

①現場で臨床医として働き、目の前の患者さんを救う事ができる。

(日本の医師免許は基本的には海外で使えません。厚生労働省で英語の証明書を発行してもらい、NPOに提出し、NPOがその国から許可をえて、現場で医療行為ができます。)

②自分がやりたい様にできる。融通が利く。

③政府の政策では救えなかった、人たちに対してきめ細かい支援ができる。

 

このパータンのデメリット

①命の危険がある。

民族間の争いもあり、敵の味方は敵になるため、医療者であっても標的になる可能性がある。なので、拉致された時の対応などをシュミレーションをしたり勉強します。

②お金が儲からない

もらえても月10万円台、医者であればバイトしながら生活をする。

③独りよがりの支援になりやすい。

行政機関と比べて小規模なので、アウトカム(結果)をだしずらい。

 

 

 

 

著明な先生方

中村哲先生

www.asahi.com

川原尚行先生

ja.wikipedia.org

吉岡秀人先生

www.japanheart.org

 

 

 

もう一度いいますが、完全に私見です。そして、僕はどちらの仕事も完全に素晴らしいと思っています。

何も副作用がなく病気を完全に治す薬がない様に、それぞれの長所や短所があります。

だからこそ、国際協力は、行政機関、NPO、アカデミック、起業等が連携して協力する事が必要です。

 

 

なので、各分野の方が言い争いしても意味がありません。

 

NPOなんて、救える人数少ないじゃないか!自己満足じゃないか!」

「お役所仕事して、ガイドライン作成しているだけじゃないか!現場で人を救え!」

 

 

僕にはこれはこんな風に聞こえます。

 

「りんごは、包丁で皮をむくのが面倒くさい!みかんの方が絶対美味しい!」

 

「いやいや、みかんは何か柔らかいし、あの触感が嫌いだ!リンゴの方が絶対美味しい!」

 

 

リンゴもみかんも、どちらも美味しい。どちらにも素敵なところがあります。

大切な事は、きっとお互いの長所を認め合い、補完し合う事です。

 

 

 

なんだか、話がずれた。

 

 

なので、学生さんが国際協力をする場合、絶対こうするんだと決めている場合は除き、僕はどちらの可能性も残すために、学生時代にこれをやっておけばいいと思います。

自分の学生時代の若干の後悔を残しつつ・・・

 

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学生時代にやっておいた方が良い事

①英語を勉強する

行政機関でも臨床でも、必要です。学生時代に最低toefl 80点できれば100点。といってる自分にすごいブーメランが刺さっている。痛い・・・

 

スタディーツアーに参加する

まず現場をみる。それだけで自分のモチベーション、その後の何かやりたい時への周囲の説得力が変わります。

 

インターンを受ける等行政機関の仕事に触れる。

休学する等ありかもしれませんが、受けておいて損はありません。

 

④色々な先生に話を聞きにいく。

 

 

【最後に】

長崎大学大学院熱帯医学講座で、たくさんの先生とお話させてもらい、著書を通して、NPOを通して、取材を通して、色々な先生方を拝見してきました。

 

分かりやすくするために、キャリアをまとめてましたが、様々なキャリアがある中で唯一共通してした事は

 

 

全ての先生方に

 

「情熱」と「それを選択した理由」がありました。

 

 

「こういう人を救いたい」という情熱と、「だから自分はここで働いた」という理由がありました。

 

 キャリア的に良さそうだから、これを選んだとか

 

安定を求めてと

 

答えた先生は一人もいなかった。

 

心のどこかで思っていたかもしれないけれど、少なくともそれが一番の理由ではきっとなかった。

 

 
国際協力系の本は、種類も少ないので、10冊ぐらい読めば大体パターンが分かります。なので、つまるところ、自分の情熱に従い、思う様にやってみればいいんじゃないかと思います。

色々な先生を参考にしながら、どんな人をどんな風に貢献したいのか考えて行動すればきっと、うまくいくと思います。というか、それしか、きっとうまくいかないと思います。

 

そのために、学生時代に、英語を勉強したり、現場をみたり、行政機関の仕事に触れたり、たくさんの先輩方とお話させてもらう事。

 

 

自戒も込めて

 

素晴らしい先輩方を参考にさせてもらいながら、情熱と戦略をかけあわせて、たくさんの方に貢献できればと思います。

 

 

道は長いのだ。それは本当に、果てしなく。

 

 

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まとめ:りんごも、みかんも美味しい。そこに優劣はなくて、好みがあるだけ。

     学生時代に英語はやっておきましょう。。

 

 

「僕たちはヒーローになれなかった。」

 

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向井理さん推薦!


~献身(ボランティア)とは何か
愚直に自分と向き合う医師の現在進行形の物語~

 

 

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映画化以降の8年間の苦悩、悔しさ、涙、仲間の大切さ、出会い、自分の幸せ、収入やキャリア、夢や目標の叶え方、なぜ僕たちは働いているのか?色々なものを詰め込みました。

 

 
僕たちはヒーローになれなかった。

けれど

みんなと一緒になら、目の前の命を救うことができる。



NPO法人あおぞらを通じて、印税をカンボジアの手洗い場建設等に使わせていただきます。

 

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 (初版の印税で一つ目の手洗い場を2020年4月に建設させて頂きました。)

 

 

総合診療医  NPO法人あおぞら 理事長
葉田甲太

 

 

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