カンボジアの僻地に病院を建設し8000人の命を守りたい。 2018年2月11日
建設のお手伝いをさせてもらったサンブール保健センターは、カンボジア北西部のバンティメェイチェンイ州に位置している。
前日に、世界遺産プレアビヒアから新設した保健センターの最寄りのホテルまでに移動した。
カンボジアに到着した際に、開院式スピーチを、国際NGOワールド・ビジョンさんから、依頼された。
これが中々思いつかない。
到着してから、考える時間はかなりあったはずだけれど、夕食をすませ、時刻が深夜0時を回っても、どうしてもスピーチの原稿が思いつかない。
一緒に考えてくれていた、めちゃくちゃ優しい近藤ですら、さすがにこんな直前にもなって、まだ完成してないのかといった感じで、若干不機嫌になっているほどで、申し訳なかった。
通訳のブティさんや近藤と、その後も夜通し考え、午前2時頃、もう自分の気持ちに素直になるしかないと覚悟を決めて、朝方4時頃になって、原稿のスピーチをなんとか完成させた。
二時間睡眠で、午前6時に起床し、ホテルの横にあった中華料理屋さんで、朝食のフォーをたべ、サンブール保健センターにバスで向かった。
1時間半ほどすると、老朽化した保健センターの横に新築の保健センターが立っていて、村人が150人ほど集まってくださっていた。
保健センターの前で、バスから降りると、病院スタッフ、国際NGOワールド・ビジョンのスタッフ、村人など何人にも握手を求められた。
その中に、前回訪問時に。生後28日目の赤ちゃんを亡くした、29歳の両親がいた。お腹がふっくらしているので、どうしたんですかと聞くと、今新しい赤ちゃんがお腹にいて、この新しい保健センターで産むつもりだと、ありがとうとおっしゃってくれて、眠気も吹き飛んだ。
もうなんだか、ここで泣きそうになりながら、準備してくださった式典に出席するために、壇上に用意して頂いた席に腰掛けた。
開院式の参加者は200人を越え、盛大なものだった。
現地の保健省の副大臣も出席され、スピーチを30分ほどしてくださった。
カンボジアは、近年、与党が野党の代表を逮捕するなど、選挙で不正な動きがあり、政治的な問題を多く抱えている。
もちろん、本来なら医療に直接アプローチするより、そういった政治的な問題や、経済的な問題を直接解決した方がより良いアウトカムを、もたらせるかもしれない。
本当は医療よりも、政治や経済が世の中を動かしている事に自分だって気づいている。
そんな事が今すぐできたら、素敵だけど、そんな力が残念ながら今の自分にはないので、できる事をコツコツと進むしかない。嘆いて何もしないぐらいなら、嘆きながらでも、今できる事していたい、
色々な困難がある中、それでも自分のできることを、1mでも前に進めるたに、進むしかない。
厚生省の副大臣、尽力して下さったワールド・ビジョン・ジャパンの松岡さん、嶋岡先生、与那国島で出会った女子中学生がスピーチしてくださった。
よく晴れた青空だった。
【開院式スピーチ】(全文)
チョムリアップソー(はじめまして)
クニョムチュモールコータ(私の名前は甲太です)
ソクサバーイ(元気ですか?)
(会場:ソクサバーイ)
はじめまして、僕の名前は葉田甲太といいます。
今日はお忙しい中お集まりいただき、本当に有り難うございました。
今日という日を迎えられたことをとても嬉しく思います。
たくさんの方のおかげで、ここに立っています。
なぜ僕がここに立っている少しだけ説明させてください。
僕は2005年に、あるNPOを通して、コンポントム州に小学校を建てました。
それが、カンボジアとの出会いで、今も昔もカンボジアと言う国、カンボジア人が大好きです。
2005年から、継続支援のためカンボジアに来ていましたが、2014年にあるお母さんに出会いました。
そのお母さんは、生後22日の赤ちゃんを亡くしていました。
そのお母さんは赤ちゃんをなくした話をする時、ワンワン泣いていました。
僕は日本人です。
あなたたちはカンボジア人です。
信じている宗教とか、話している言葉も少し違うかもしれません。
でもそのお母さんの涙を見て、赤ちゃんを失った悲しみは日本でもカンボジアでも、世界共通なんだと、その時僕は思いました。
自分の赤ちゃんをなくして、悲しくないお母さんはきっとこの世界にいません。
その涙を、ただ単純に減らしたいと思いました。
でも、そんな思いを持ち、色々行動しましたが、結局自分ではなかなかうまくいきませんでした。
そんな時にワールド・ビジョン・ジャパンに出会いました。谷村さんという方です。
ワールド・ビジョン・ジャパン、国際NGOワールド・ビジョンのスタッフ、たくさんご協力いただき今回のヘルスセンター(サンブール保健センター)の建設がスタートしました。
今回のプロジェクトを進める時も、また、赤ちゃんを亡くしたお母さんに出会いました。
今日も来てくれています。
やっぱりそのお母さんもお父さんもその赤ちゃんの話をするときには泣いていました。
残念ながらその赤ちゃんが戻る事は現代の医学ではありえません。
だけど、その赤ちゃんが、僕に教えてくれた気がします。
その命を持って、次の赤ちゃんの命を助けてほしいと、僕たちに教えてくれたんじゃないかと僕は思います。
そんなお母さんや赤ちゃんの悲しみを減らすには、ヘルスセンターが建って終わりではありません。
ここに来ていただいた住民、ヘルスボランティア、ヘルスセンタースタッフ、政府の方、NPOの方、全ての方の力が必要です。
ヘルスセンター建設のお手伝いをさせていただきましたが、僕はヒーローではありません。
ヒーローは、赤ちゃんの命を守る、ここにいる、全ての人たちです。
僕は、その中のたった1人にしか過ぎません。
亡くなってしまった赤ちゃんがいます。
今、天国で僕たちを見てくれているでしょうか?
どんな気持ちで今見ていますか?
元気にしていますか?
今のこの景色はあなたが僕を通して作ったものです。
このヘルスセンターでうるさい位の赤ちゃんの健康の鳴き声が聞こえて、赤ちゃんを見て、お母さん、お父さんが笑顔になって、そして、兄弟、親戚が笑顔になることを僕は今夢見ています。
僕の事は忘れてもらって構いません。
村のみんなが健康に幸せに生きるサポートできたなら、僕は幸せです。
僕自身が赤ちゃんの時、とっても体が弱くて、僕のお母さんは神様に頼むために何回も神社に行ったそうです。
そんな体の弱かった僕が今ここにいるのはそれはもしかしたら、神様が、僕を、産んでくれた意味なのかもしれません。
僕を産んでくれた神様と、母親にも感謝します。
そして関わっていただいたすべての方々に感謝します。
あなた方の幸せと健康とそして涙が1つでも減ることを祈ります。
たくさん受診してください。健康診断にも来てください。
もう分娩中に天井が落ちることも、建物がグラグラゆれることもありません。
今日は赤ちゃんの命を救う技術を教える日本の偉い先生も教えにきてくれました。
そして変わらず素晴らしいヘルスセンターのスタッフの方々もいらっしゃいます。
だから安心して受診してください。
いっぱいきてくれますか?
ここのヘルスセンターが建つまでも、ヘルスセンターの人は一生懸命頑張ってきました。是非、今、拍手してあげてください。
(会場:拍手)
あなたたちが、笑って、それに健康に貢献できたなら満足です。
僕の人生の中でそのお手伝いをさせていただきありがとうございました。
あなたたちに涙ではなく笑顔が溢れるようになります。
そして亡くなった赤ちゃんたちが今、天国から笑顔で見てくれていることを望みます。
ソクサバーイ(お元気で)
オークン(ありがとう)
ソクサバーイ(お元気で)!
★NPO法人あおぞら
カンボジア、ラオス、タンザニアで母子の命を守る活動を広げるためマンスリーサポーター募集中です!
2019年11月22日発売
印税は全額、カンボジア、タンザニア、ラオスの活動に寄付させて頂きます。
出版社 あさ出版
発売日 2019年11月22日
価格 1430円
https://00m.in/5Eku6
向井理主演『僕たちは世界を変えることができない。』から8年後
映画化後、有名人の様にチヤホヤされて一方で
建設したカンボジアを再訪すると、生後22日目の赤ちゃんを亡くして泣いてるお母さんがいた。
自分の無力さ、偽善、キャリアや、収入、なぜ僕たちは働いているのか?
本当の幸せ、自分らしい人生と向き合いながら
カンボジアに病院を建設し、世界の果てに医療を届ける活動を広げるまで。
向井理さん推薦!
〜献身(ボランティア)とは何か
愚直に自分と向き合う医師の現在進行形の物語〜
『僕たちはヒーローになれなかった。』
出版記念 47都道府県全国ツアー 第1弾
葉田甲太(医師 NPO法人あおぞら代表)× 税所 篤快(e-education創設者)
ー大人になった僕たちの今。 国際協力×本出版ー
12月6日イベント詳細
12月7日@大阪イベント詳細× 松本浩美(認定NPO法人Homedoor 理事 兼 事務局長)×座間慶彦(NPO法人 NGOクワトロ 理事 兼 事務局長/THE BONDS/株式会社DeNA)
12月15日@東京イベント ×荒井昭則(NPOコンフロントワールド代表)
ー社会人になってもNPOを続けることー
12月21日@栃木イベント ×嶋岡鋼(新生児科医)