奇跡と運とシンクロニシティ 2017年8月26日
生まれた時の赤ちゃんは、呼吸がとまって、心臓がとまる事が多い。
心臓がとまった時に蘇生するのはとても難しいのだけれど、呼吸がとまった時に呼吸をもどす方法はそれほど難しい訳ではない。
赤ちゃんは生まれたときに、100人中10人は自分でうまく呼吸ができない。医療者が適切にサポートすることで、そのうまく呼吸できない赤ちゃんの10人のうち、9人は救うことができる。
Early Essential Newborn Care, WHO WPRを参考にすると、新生児仮死が24%の原因でカンボジアでは亡くなっている。
赤ちゃんが生まれた時に、赤ちゃんに適切に対応する新生児蘇生法という技術を教える事ができれば、赤ちゃんを救える可能性が高くなる。
この技術を教える事自体は、非常に難しい訳ではなく、プロトコール通りに、赤ちゃんの心拍数、呼吸を参考に、刺激を加えたり、バックマスクで換気をしたりと、手技自体はそれほど煩雑な訳ではなかった。
しかし、僕たちは、新生児蘇生法を教えたという事実を作る事でなく、この手法を教える事で、現地の助産師さんが使える技術を取得し、実際に赤ちゃんの命を、救い、お母さんを笑顔にするまでが、目的だった。
そんな目的を、新生児医でも医療教育に精通してない自分には全くできそうになかった。こうなったら、自らでやって頂ける人を見つけるしかない。
僕たちの目的を達成して下さる先生の条件を考えた。
①小児科医である。②新生児科医である③英語話せる。④海外途上国支援の経験がある。⑤新生児蘇生法を教えられるインストラクターである。⑥僕と一緒に無給で、カンボジアに言って頂ける。
・・・・・・
当直中に、妄想したが。
まぁ、無理だろうな。
と泣きそうになった。おそらく、この条件に、合う人は日本に一人か二人しかいない。
そして、何より⑥の条件が厳しすぎる。そんな人を見つけられるだろうか。
考えても物事は好転しない。顔が広そうな先生に、聞けば、どこかでそういった先生につながっているかもしれない。と安易な発想が浮かんだ。
諦めるのはやれる事を全てやりきった後でも、遅くない。
Iphoneを取り出し、Fbのメッセンジャーから救急でお世話になった先生に聞いてみた。
「先生ご無沙汰しております。今カンボジア病院建設をすすめていて、その中で新生児蘇生法を教えて頂ける、英語が話せて、新生児科医で、海外途上国支援の経験あって、新生児蘇生法を教えられるインストラクターの先生を探しているのですが、お知り合いの先生おられますか?」
今考えたら、大分失礼なメールをお送りしてしまった。
正直、ブチ切れられて返事が返ってくるだろうと予測した。その様な事態になった場合は菓子折りを持って謝りに行くしかない。
1時間後に、fbのメッセンジャーで
「いるよ!」と救急科の先生から返ってきた。
疑心暗鬼すぎて
「本当っすか?!」と返すと
「うん、新生児蘇生でシュミレーション教育をやっている嶋岡先生という先生が知り合いがいる。」
と言ってくださり、すぐにfbでグループを作り、つないでくださった。
その嶋岡先生という先生に何って送ろうか、考えた。
たしかに、医師でニュースになる様な方がいるけれど、僕は基本お医者さんは、みんな良い人だと思っている。
もちろん性格の合わない方はいるけれど、基本はみんな患者さんのことを思っている良い人たちだと感じている。
相当個人的な感想だけれど、中でも小児科医の先生で、悪い人に僕は会った事がない。みんな子供の事を一番に考えてくださる良い先生ばっかりだ。
ここは、もうただ、後悔無いように、ど真ん中ストレート一本勝負でいくしかない。それで、打たれて失敗したら、仕方ない。
今まで、自分の見てきたこと、やってきたこと、うまくいかなったこと、今の現状、これを変えるには、新生児蘇生法があること、先生の力を必要としていること。をFbのメッセンジャーに短く詰め込んで、
最後に、赤ちゃんのために、力を貸してください。とメールをうった。
五分後にメールが、その小児科医の嶋岡先生から連絡がきた。
「やります。協力します。」
嶋岡先生は、偶然僕の本を読んだ事があって、さらにいえば、ワールドビジョンのチャイルドスポンサーでもあった。
後から、考えると今回の病院建設プロジェクトがうまくいったのは、運が良かったんだと思う。こういう偶然をシンクロニシティというらしい。
カンボジアに小学校を建設した時、本を出版しようと思った時にも、救世主が現れた事があった。
その時に共通していたのは、自分がいつもボロボロの時だった。
ボロボロの背中を、人はみてくれるのかもしれない。
もう何もいらないと、神様みたいな存在に祈って、覚悟を決めた様な時だけに運は降りてきた。
単純に運が良かっただけかもしれないけれど。この小児科医との先生が、赤ちゃんを救う講習会を開く意味で、後々にとても大きかった。
小さい頃、僕は医療者として、村を一人で救える様なヒーローになりたかった。
それでも、自分より上手にできる人がいるなら、自分に能力が足りないなら、誰かに頭を下げてでも、見たい景色があった。
ヒーローになれなくても良い。嶋岡先生と出会って、一人じゃない叶えられない夢も誰かと一緒になら叶えられそうな気がした。
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