葉田甲太 ブログ。

医師 NPOあおぞら代表 5万人の命を守るタンザニア病院建設まで。

本日は誠に申し訳ありませんでした。 2016年5月30日

 

 

 

行動しない時ほど、評論家ぶって、井の中の蛙状態で、自分はやればできる、なんて思っていた。

でも、実際に行動すればするほど、自分はなんて平凡なんだと気づいた。
そんなスタートの日だった。

 

 

 

 

2016年5月30日に、長崎大学大学院熱帯医学講座の中で、先生に講演会の企画をしてもらって、自分なりに、私立病院をカンボジアにつくって、赤ちゃんの命を救うというプランに意気揚々と落とし込んだ。

 

授業が終わった午後5時30分から、グローバルヘルス研究棟の三階の教室で、講演会を行う段取りとなっていた。

 

予想通り、国立国際医療センターの国際医療局で、カンボジアの母子保健を担当している助産師、医師と中継が繋がっていた。

 

まずは、普段通りカンボジアとの出会い、小学校建設の話をした。

 

次に小学校の村で、お母さんと出会った事。赤ちゃんを亡くした事を話した。

 

その涙を減らすには、どうやったら良いか。「プライベートの診療所を建設し、そこで安全な出産をしてもらい経営する」という今考えれば、申し訳ないほどの穴ボコのプランを披露した。

 

予想通り、批判に似た質問の嵐だった。

 

サステナビリティ(持続可能性)はどうするのか?」

 

ランニングコストは、どうするのか。果たしては、それはコストエフェクティブなフラン(費用対効果のある計画)なのか?」

 

「小学校の近くにある、公共的医療機関である出産を取り扱っているヘルスセンターとの共存はどうするのか?」

 

それらは、とても合理的な質問だった。なんとか、その場をやり抜けようと、頭を働かそうとするも、そんな小細工で通用する相手でもなかった。

 

もう、これは落胆されるかもしれないけど、正直に言うしかない。

 

たくさん質問を受け、歯切れの悪い回答を続け、国立国際医療センターの方々も、そんな僕にきっといい気持ちはしなかっただろう。

重苦しい空気を感じながら、答えた。

 

「申し訳ありませんでした。みなさんにご指摘して頂いた点は、おっしゃる通りだと思います。ご指摘頂いた通り、自分の知識不足や配慮が足りない点が多々あると思います。本日はお忙しい中、お時間をとって頂いたにも関わらず、こんな発表をして申し訳ありませんでした。」

 

 

格好悪いのは分かっていたけれど、どう思われるか想像もできなかったけれど、このまま終わっては何もならないので、ただ必死に、続けた。

 

「ただ一つだけお伝えしたいのは、自分はカンボジアの国で、泣いている人と出会い、そんな状況を改善したくて、僕は長崎に来ました。僕のプランが甘くて申し訳ありません。批判も甘んじて受けます。それでも、だからこそ、どうやったら、実際に赤ちゃんを救えるか、僕に教えて頂けないのでしょうか。今日は本当に申し訳ありませんでした。」

 

 

講演会というのは、素晴らしい講演家が、聴衆に新しい知識や概念を伝えるものだ。
それとは、逆に、自分は知識不足を面前にさらしながら、頭を下げ謝っている。
カンボジアの赤ちゃんにも、講演に来たお客さん、機会を設けた教授にも申し訳なさすぎて、力がない自分が情けなくて、なんだか涙すら、でた。

 

 

その姿をみた、先生方は不憫に思ったのか、その発言から空気が変わり、色々と教えて頂いた。

 

質問時間もあわせて、おおよそ1時間ほどの講演会が終わった。

 

熱帯医学講座の仲間も来てくれて、「よかったよ、なんか感動した。」と泣いてくれている人もいた。

 

教授も「面白かった、とても良かったよ」と講演の後、言ってくれた。国立国際医療センターの方は、「気持ちがとても伝わりました」と気をつかってくれたのか言って下さった。

 

気持ちは重要だけれど、気持ちだけでは、人の命は救えない事は、医療者はやっぱり分かっていて、だからこそ逆に、身に染みた。

 

 

講演会が終わり、階段をトボトボと降り、グローバル館に併設されている、熱帯医学資料館に向かった。資料館には永井修先生の業績がかざってあった。

 

永井先生は、放射線科医として長崎で被爆されながら戦後に活躍され、世界的な著書も残された歴史的な先生だ。

 

どうして、同じ人間なのに、こうも違うのだろう。

 

 

資料館をでた後、長い下り坂を降りて、路面電車に乗り、自宅のアパートがある部屋に着いた時は午後7時ごろだった。

 

 


長崎に来て、赤ちゃんの命を救う方法は理論的にわかった。でも、その理論を行動に起こさなければ、実際の命は救えない。

 

 

そして、既に行政機関では国連や国立国際医療センターの様に、大きな団体に所属して、たくさんの命を救っている優秀な方がいる。研究の分野では、日夜努力している先生方がいる。ビルゲイツの様に、経済界から多額の支援をし、多くの命を救っている方がいる。

 

 

それに比べ、自分はどうだ。そんな優秀な先輩方がいるのに、自分が行動する理由は何んだ。

 

 

アパートのようやく買った布団の上で、ぼっーと、考えた。

 

 

結局のところ、泣いている人をみて、何かできる様な気持ちに勝手になって突っ走て、自分がいい気持ちになりたかったじゃないか。

 

国際協力をしていると、注目され、気分がいいから、やっているだけだろう?

 

人に「すごいねー」なんて、言って褒められるのが、気持ちいいんだろう?

 

人と違う事をして、目立ちたいだけだろう?偽善者とは自分みたい人間をいうのだろう。

 

結果をだしていない自分には、結局、言い返せる言葉もなかった。

 

一部では事実かもしれない。

 

 ビジネス関連の仕事を家族がしている中で、自分の手で何かをしたいと、国境なき医師団の様な活動をしてみたいと、三男の僕は、一人で医療系の仕事人生を選んだものの、薄っぺらい正義感を抱えて、結局誰の役にも立てていなかった。

 

コンビで夕食を買おうと、ATMで現金を下ろした。二ヶ月間のバイト以外は無給だったので、コンビニで預金残高を確認すると、どんどん貯金がへっていった。

 

 

「一体、自分は何をやっているんだろう。」

 

 

自宅のアパートに戻り、地べたにソース焼きそばを、置きながら、呆然としながらも腹は減るので、掻き込んだ。

 

 

綺麗な水も、暖かいお湯もでてくるシャワーをあびて、始発の路面電車にのり、長崎大学にむかった。

 

 

世界を変えるなんて、世の中をよくするなんて、笑ってしまう。そんな前に、自分の半径1mの生活だけで精一杯じゃないか。

 


長崎大学の熱帯医学に、ワクワクしながら、来たら

「あなたに、できる事なんて、ほとんどないよー」

と宣告された気分だった。

 

いつもの「現実」という壁が、高くそびえ立っていた。

 

 

 

 

f:id:kotahada:20191001230522j:plain

 

 


NPO法人あおぞら

npoaozora.org

 

カンボジアラオスタンザニアで母子の命を守る活動を広げるためマンスリーサポーター募集中です!
①最新の年次報告書、活動報告会にご参加頂けます。
②月に一度、限定メールマガジンをお送りいたします。
③マンスリーサポーター限定グループへのご招待、
④あおぞらの活動に合わせて、カンボジアのGRAPHIS小中学校、サンブール保健センターを現地で見学いただく事ができます!

 

 

f:id:kotahada:20191001211819j:plain

readyfor.jp


クラウドファンディング挑戦中!ご支援、シェア、リツイート等、有形無形に関わらず
ご協力頂ければ誠に幸いですm__m