葉田甲太 ブログ。

医師 NPOあおぞら代表 5万人の命を守るタンザニア病院建設まで。

行動すれば救える赤ちゃんの命が必ずある  2016年5月10日

 

 

「途上国の僻地での赤ちゃんを救う方法」を学ぶために、一番楽しみにしていた授業がある。

 

カンボジア国立国際医療センターの国際医療局から派遣され、母子保健の事業で働かれていた先生の授業だ。これ以上のものはなかった。

 

 

授業を通して、基本的な事柄を学んだ。

  

 

 

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参考 日本ユニセフ協会

 

 

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©日本ユニセフ2015

 


 


世界では未だに、毎日、17,000人の子ども達が亡くなり、その90%はサブ・サハラアフリカや南アジアで起こっている。未だに主要原因は1位肺炎 2位下痢 3位 マラリアが占めているが、近年肺炎には抗生剤、下痢にはORSの浸透、マラリアには診断キットの開発、蚊帳の配布などにより、1990年と比較すると、6割程度も改善がみられた。

 

 

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2000年 世界の5歳未満死亡率

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2015年 世界の5歳未満死亡率

アフリカ、アジアを中心に5歳未満死亡率は大幅な改善が見られた。

しかし、新生児の推計死亡数については、1990年と2013年を比較すると、3割程度しか減少が認められず、5歳未満死亡率の減少率と比較すると、その改善は緩慢だった。*1

そして、世界では、年間約100万人の新生児が出産当日に亡くなっている。*2

 

 

そんな赤ちゃんの命を救うには、「ランセット(Lancet)」誌で発表された近年の調査では、新生児死亡の40% は、出生時前後の主要な支援によって回避できると推定されている。専門技能を有する保健従事者によるケア、緊急時の産科ケア、即時新生児ケア(授乳支援、臍帯ケアや保温ケアなど清潔な出産慣行を含む)、新生児蘇生などの、適切な基本的な医療サービスがあれば、新生児の死亡を約4割減らすことも分かっている。*3

 

 


*1 Wang H et al.(2014) Lancet
*2 Lawn JE et al. Lancet 2005:365;891-900
*3 Pattinson R, Kerber K, Buchmann E, et al. Stillbirths: how can health systems deliver for mothers and babies? Lancet 2011; 377: 1610–23.

 

 

 

 

熟練された技術や、豪華な医療器具がなくても、医師がいなくても、基礎的な医療があれば生後一ヶ月未満の赤ちゃんの命を4割救える。

 


行動さえすれば、基礎的な医療サービスを整えれば、救える赤ちゃんの命が世界には何十万もある。

 

そんな科学的な事実にワクワクしながら、カンボジアで働かれていた経験をもつ先生に声をかけた。

 

「あの、カンボジアで、新生児を亡くされたお母さんと出会って、それを減らしたいと思っているのですが、どうやったらいいか考えていて、よかったら話を頂けませんか」

 

先生に話をすると、僕の本を知っていたらしく

 

「あーあの、映画で向井理さんが出演していた本でしょ?すごいね、有名人だね。」

と半分イジられた後、その先生はとても優しい表情を浮かべた。

 

「何ができるか模索しようとしていて、カンボジアでプライベートなクリニックを開いて・・・」

と僕が突っ込んだ内容をいうと
優しい表情から一転して、厳しい顔になった。

 

「プライベートクリニック?」

 

「いや、あの安心して出産できる病院を建設して・・」

 

と答えると、さらに表情は厳しくなり

 

「今ある、公的なヘルスセンターとの共存はどうするの?」

 

「・・・・・」

 

カンボジアに直接いって、国際保健の仕事をしていた先生である。人の命に関わる支援になると、やはり真剣になる。

気まずい沈黙の後、今度は一転して、優しい表情になり

 

「でも、なんだか面白そうだから、今度国立国際医療センターの国際医療局のみんなとつなぐから、講演会してくれませんか?」

 

 


本当は、あの時逃げたかった。

 

 

国際保健の知識も経験も不足している僕が、実際に国際保健で、ましてやカンボジアの母子保健で働かれている専門的な医療者の前で、講演する機会なんて、普通有り得ないし、自分のプランがショボければ、大恥をかく事は目に見えていた。

 

でも、逆に考えれば、いい機会かもしれない。いい支援の方法に結びつくかも知れない。

 

今更、逃げる選択肢など、ない。

 

 

「やります。是非やらせて下さい。」
「分かりました。じゃあ日程は調整します。」
と言って、またとても優しそうな顔をうかべながら、先生は答えてくれた。

 

赤ちゃんの命を救うにはどうしたら、いいか。お母さんの涙を減らすには、どうすればいいか。

 

 

あの時の僕は、すべてが不足していた。ただ情熱だけがあった。そして、ただ真剣だった。プライドも何もないから、自分は馬鹿だと自覚して、アホみたいな質問でも聞けた。

 

 

逃げられない環境に飛び込むことが、自分に、行動や覚悟を時々くれた。

 


今思えば、恥ずかしいほどの「私立の診療所を建設して、運営する」するというpoorな、プランを一生懸命すすめていった。

 

 

 

 

 

 

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『ごちゃごちゃ言わない。何をやりたいかなんて、ハートで決めなさい。決めたら、それを達成するために、24時間考えなさい。』

 

 

フィラリア撲滅でWHOで長年働かれてきた先生のある言葉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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