葉田甲太 ブログ。

医師 NPOあおぞら代表 5万人の命を守るタンザニア病院建設まで。

メリットより、デメリットが多いのに、なぜ行動するのか。 2016年3月5日夜

  

「途上国の赤ちゃんの命を救いたい」なんて、聞こえの良い、格好良いことを、いっても、自分の実力を考えると、現実はむちゃくちゃ厳しい。

 

 

一介の臨床医である自分に何ができるのか。車中で自分の現在地と目標を考えた時に、絶望的な気持ちになり、ため息をつきながら、村長の家に向かった

 

 

車の中で、景色を眺めながら、どうしようか考えを巡らせ、しばらくするとBENG村の村長の家についた。

 

建設したBENG村の小学校を訪問する際には、いつも村長の家に泊まらせてもらっていた。

 

 

亡くなったお母さんのお家は、木の柱に藁をしいただけだったけれど、村長の家はコンクリートで、台所も家の外に付属していて、水をためる大きな貯水タンクも付随していた。

 

 

カンボジアの村は、雨季対策のため、ほとんどが高床式の住居になっている。コンクリートの階段を登り、二階の居間で村長とご家族と一緒に夕食を頂いた

 

 

お酒を飲みながら、雷魚の素揚げ、空芯菜のスーぷと、豚肉と野菜炒めを食べた。この料理も、普通の村人からすると、かなり豪華な夕食だ。

 

 

数時間晩餐の後、村長がシャワーを浴びろというので、外にでた。

 

 

シャワーというよりは、雨水をためたタンクから桶で掬い体にぶっかけるだけだ。
外にでて、裸になり、もうどうでもいいやと、桶にういてるコケごと、一緒に体に雨水をかけ、一日分の汗を流した。

 

 

 

お酒が弱い僕は、継がれた正体不明のお酒で酔っ払い、新しい洋服に着替えながら、二階から村長と家族の笑い声が聞こえた。

 

周りには街灯等の人工的な光はなく、真っ暗闇の中、iphoneの明かりだけが頼りだった。

 

 

人の命を救う。泣いている人の涙をとめる。自分にできるだろうか。

 

 

少し酔っ払い、頭が痛くなりながら、色々な事を考えた。

 

 

そもそも、世界の赤ちゃんを救う方法も分からない、国際保健の知識も詳しくない。NPOがうまくいくかも分からない。収入は半分になり、恥もかいて、偽善者とネットでたたかれるかもしれない。ネットで色々いわれるのはやっぱり嫌だ。普通に臨床医をやっていて、有名になる事のメリットなんて一つもない。普通に生きていれば、よっぽどいいのかもしれない。それだって、悪い事ではない。

 

 

行動を起こす前に、行動を起こす事のデメリットがまた思いついた。

 

そのデメリットは、いつも行動する力を奪っていった。

 

 

シャワーを終え、横をみると通訳のブティさんは、着替えをすませて、タバコを一服していた。

 

 

大人になり、年齢を重ねるにつれて、自分の限界も見えてきた、自分より優秀な人が、たくさんいる事も知った、変化の先にあるデメリットが予想できる様になって、怖くて、行動を起こせなくなった。

 

それでも、自分の家か、病室で亡くなる時に、自分は何を思うのだろうか。

 

 

赤ちゃんは22日で亡くなった。日本でも、若くして亡くなった患者さんがいらっしゃった。そんな時に、自分はなんて、言い訳しよう。

 

「あなたは、まだ生きているじゃないか。」

 

そんな事を言われたら、何も答えられない様な気もした。

苦しみには種類があって、絶対値を比較することはできない。それでも、何かをしたかったはずなのに、できなかった苦しさに比べれば、自分の苦しみ等、おそらく比較にもならない気がした。

 

 

行動を起こす前に、未来を完全に予測することはできない。行動を起こせば、賞賛と同じように、批判もくる。失敗もするかもしれない。

 

すべてのデメリットを吹き飛ばす、もう、最後の最後の反論は一個しかない。

 

 

いずれ、自分も必ず、亡くなってしまうから。

 

 

 

自分の保身も時に大事だけれど、自分の保身だけに生きていたら、亡くなった方や、赤ちゃんに合わせる顔がない様な気がした。

 

 

横にいたブティさんは、タバコを終えても、そばにいた。僕が馬鹿みたいに一人であーだこーだ考えているのを察して、ただそばにいてくれた。ブティさんは、下ネタが時々ひどいけれど、いつも底なしに優しい人だ。

 

 

屋外で二人で何も話せず、時間がすぎていき、しばらくして階段を上がり、蚊帳の中に入り、雑魚寝の形で、眠りについた。

 

 

カンボジアでも、星がきれいで泣きそうになった。

 

 

次の日、「コケコッコー!」と鶏の大量の鳴き声に起こされ、蚊帳に空いていた穴から侵入した蚊に腕を複数刺されている事に気づき、テンションが下がりながら、帰国の途についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


発展途上国で住民に最も身近な医療施設はヘルスセンターと呼ばれる。
医師は基本的に常駐せず、看護師が対応しているが、出産解除、妊産婦検診、家族計画、予防接種、ありふれた疾患や怪我の手当てを行っている。
住民に安価で、基礎的な医療サービスを提供している。

 

 

 

 

 

 

 

 

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